559: 名無しさん@おーぷん 20/10/02(金)11:13:20 ID:XW.4g.L3
結婚して地元から遠くに引っ越したんだが、三十代半ばの頃、そこで偶然中高の部活のチームメイトだったA子と再会した。
A子も、私と同じ頃に結婚して同市内に住んでいたらしい。
カルチャースクールの体験教室で互いに気付いて、再会を喜び、友達として付き合うようになった…が。

私もA子も子供がいない。
それが気楽だったのは最初の半年ぐらいだけだった。
ふたりとも不妊治療しても出来なかったんだが、私の方は、やれることはすべてやったと諦めがついていた。
が、A子の方は気持ちがまだ整理がついていない様子だった。
私の方は夫に原因があっての子無しだが、A子の方は逆にA子自身の方に原因があった。
この微妙な立場の違いもあったんだろうが、ふたりの間に少しずつ溝ができてきたんだ。

A子は旦那さんに対して、よく愚痴をこぼしてたらしかった。
近所の奥さんに子供のことを聞かれる度に
「今日こんなこと言われて辛かったー」
ポスティングチラシで学習塾の案内が入れば、
「子供いないのに、一方的にこんなの入れられて辛いー」
パートの面接に行って
「履歴書に書いてないのに子供のこと聞かれて辛いー」
と、
とにかく何かある度に
「(旦那さん)に愚痴ってる」
と言っていた。




気持ちの整理がついていない時は、そういう小さなことにいちいち心がささくれる気持ちは分らなくもない。
だけど私は、
「あんまり旦那さんに言わない方がいいよ」
ってA子には言ってた。
「たまに愚痴るのはいいけど、あまりにしょっちゅうだと、旦那さんも辛い」
って。
でもA子が言うには、
「(旦那さん)はちゃんと受け入れてくれてる。
優しい人だから辛い気持ちは伝えるようにしてる」

って事だった。
私はA子の旦那さんと同じ立場になるわけだけど、
(旦那からいちいち愚痴られたらしんどいだろうな)
と思った。

そうこうしてるうちにある日、突然A子が泣きながらうちにきた。
「(旦那さん)から『離婚してほしい』と言われた」
んだそうだ。
A子と再会して一年ぐらい経った頃だった。
旦那さんは子無しについては受け入れていたらしいんだが、あまりに子供のことで愚痴をこぼされているうちに
『もう聞きたくない』
って思うようになって、そこから
「やっぱり子供が欲しいって気持ちが強くなってきた」
んだそうだ。
『自分には子供を作る能力はあるんだから、子供を持つには早い方がいい』
と、ずっとそんなことを考えていたらしい。
加えて、
『あてがある(=不倫してる)わけではない、それは調べてくれてもいい』とも言われた」
って。
つまり、
『それでもおまえとは別れたい』
と言われたらしいんだ。

それ聞いた時、正直
(ほら、言わんこっちゃない)
と思った。
私だってA子のそういう話聞くの重かったもの。
旦那さんなら尚更だと思ったもの。
だから何度も『やめろ』って言ったのに…。

ここまでになったら、私はもう話を聞いてあげるしか出来ることはない。
アドバイスなんて思い浮かばないし、できないし。
離婚調停でも分が悪かったらしい。
『子供が欲しいから別れてくれ』ってのは有責にはならないんだって。

で、離婚届を出したA子がうちに来てわんわん泣いたあと、私がトイレに行ってる間に台所で手首切られたわ。

幸い直ぐに見つけたから、腕を縛ってタオル巻いてコート着せて近所の人に知られずに病院に連れて行ったけど、
連れて行く間、A子の心配より『勘弁してよ~』としか思わなかった。
『冷たい』と言われてもいい。
(あの時再会しなければ良かった、再会しても適当にお茶を濁しておけば良かった)
そんなことばかり考えてた。
(もう何も聞きたくない、もうこれ以上関わりたくない)
って気持ちしかなかった。

A子は『地元に帰る』って言ってたけど、A子が戻ってくるのが怖くて、旦那にお願いして直ぐに引っ越させてもらった。
幸いと言うか、旦那は割とプラス思考な人だったから、私の友人がうちで自殺未遂なんかしたことも
『やっちまったもんはしゃーない』
って感じで責められることはなかったし、引越しの件も『旦那の書斎作る』って約束したら無茶苦茶前向きになってくれた。

そんなことがあったのは今から10年ぐらい前のことなんだけど、急にそんな昔のことを長々と書きだしたのは、
地元の友人からA子が亡くなってたことを最近知らされたから。
あの後、再婚して再び離婚していた。
挙句、自死していた。
それを聞いて、10年前のことを詳細に思い出した。

あれから今でも時々、私んちの台所で私んちの包丁使って手首切られて床に血が滴っていたあの光景を思い出すことはあった。
自分で料理してて、うっかり指を切ってしまった時に、自分の血を見て震えが止まらなくなったこともあった。
心療内科に掛かったこともあった。
幸い旦那がいつもそばに居てくれて克服できたとはいえ、やっぱり思い出すことはあるんだよね。
もうこの世からいなくなったって聞いて、正直ホッとしてる。

誰に何と言われようとホッとしてる。



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