133: 名無しさん@おーぷん 19/11/08(金)01:58:42 ID:pkw
三十年近く前の、叔母(母の妹)が大学生だった頃の話。


叔母は甘いものが好きで、自室の机の引き出しにチョコレートを隠していて、一人で楽しんでいた。
ある日の夜中。
叔母が自室で寝ていると、
部屋のドアがそう~っと開く気配で目が覚めた。

(誰だ?泥棒か?ヘタに動くと危ないか?)
と様子をうかがっていると、
暗闇の中で動き回る気配から察するに、祖父(母と叔母の父親)らしい。
(お父さんがこんな時間になんで?)
と考えながら目をこらしていると、
祖父は部屋のあちこちをガサガサあさりだした。




(えっ、もしや父親ながら本物の泥棒!?)
とがばと跳ね起き、ベッド脇のライトをつけて
「お父さん、何してんのよ!」
と怒鳴った。
祖父は飛び上がって振り向き、あわあわしながら、
「すまん、“森永” でいいからくれ!」
手の中には、叔母が引き出しに隠していたチョコレートの箱が握られていた。

祖父も甘いものが好きで、特に“明治”のチョコレートがごひいきだった。
だけどお腹がメタボになってきたため、健康を気遣った妻(祖母)に
『禁チョコ』
を言い渡された。
祖父も同意したものの、毎日のように食べていたものをいきなりやめるのはつらい。
叔母が自室に隠れてチョコを食べていたのも、祖父を気遣ってのこと。
祖父は
(我慢ガマン)
と自らに言い聞かせて浅田飴とかなめてごまかしていたものの、その夜、ついに我慢できなくなったらしい。
(そうだ娘(叔母)は若いんだから、チョコ食べてるはずだ。
しかし父親が娘に頭を下げてチョコを恵んでもらうのは恥ずかしい。
よし、盗もう)
という思考経路だったんだそうだ。
やっぱ本物の泥棒だったwww

叔母は1かけらくらい恵んでやろうかと思ったけど、母親である祖母にばれたら〆られる。
というより
「『でいい』とはなんだ!私の森永をバカにするな!」
という怒りが先に立って、祖父を部屋から追い出した。


祖父は今85歳で、
「この歳になりゃもう怖いもんはない」
と、数年前から毎日チョコライフ(メーカーはどこでも)を楽しんでいる。



夜の訪問者 (1971年) (ハヤカワ・ノヴェルズ)