248: 名無しさん@おーぷん 19/07/05(金)12:58:54 ID:34h.8e.xc
以前勤めていた会社での出来事。

Aと言う三十代前半の男性営業社員がいた。
仕事はすごく出来る人で、大口の仕事をいくつも取ってきて社内表彰もされてるし、上司には素直な態度で受けが良い。
その代わり、Aは年下の社員には横柄で嫌われていた。

ある年に入社してきたB君と言う新卒の男性社員がいた。
B君は私ら他の社員から見てもごく普通の新入社員で、特に『今時の…』と言われるようなこともないし、仕事を早く覚えようと頑張ってるふうに見えた。
もちろん挨拶もちゃんとするし、明るくてきちんと躾けられた子だなと言う印象もあった。

だけど何が気に入らないのか、AはB君を酷く嫌っていた。
何かと言うと太腿の外側に蹴りを入れ、B君がみに蹲るとそれを見て笑ってた。
Aは、上司がいるところでは絶対そう言う事はしない。
上司に
「Aに注意して欲しい、B君が可哀想だ」
と進言した人もいたが(私も言った事ある)、とにかく仕事に関して実績がありすぎてAに強く注意できない様子。
そしてB君には
「仕事で見返してやれ」
と言う昭和な激励しかしなかった。

ある日のこと、仕事中に電話が入り、B君が慌てたふうに早退して帰った。
翌日、
「昨日はすみませんでした」
とみんなに謝ったが、聞けば母親が職場で倒れたらしい。
B君は母子家庭で母一人子一人。
「そりゃあ心配だろう」
とみんな理解し、
「気にするな」
と言った。




が、Aだけは
「かーちゃんが倒れたぐらいでアホか。これだから母子家庭は」
と言い、それからはB君を苛める時
「ママーママーおっぱい飲みたい~ってかw」
等と馬鹿にした。
Aは周りがどんなに諫めても止めなかった。

それから何ヶ月か経って、B君のお母さんが亡くなった。
倒れた時にはもう癌があちこちに転移してたらしい。
忌引休暇が明けて出勤してきた時、Aが
「ママが死んだ気分はどうだ~」
と言いながら太腿に蹴りを入れようとした。

その足をB君が両手で受け止めて振り回し、Aが派手にひっくり返った。

B君はそのAの顔を踏みつけて、
「俺にはもう守る人がいないんっすよ。
それがどう言う事か分かりますか?
ケーサツとか怖くないんで。
気が向いたら半殺しにしますんでよろしく」
と言い放った。

その日から完全に立場が逆転して、AはいつもB君の存在に怯えてて、いつも後を気にしてた。
私が後をそっと通っただけでもビクッとなる感じ。
仕事も全くできなくなった。
そうなってくると上司の当たりも強くなった。

B君の方はそれから一年ぐらい経ってから辞めていった。
下っ端社員だけで送別会やったんだけど、
「ちゃんとした会社に就職できたことを母が喜んでくれてたので、『一周忌が終わるまでは』と思ってた」
んだそうだ。

Aは再び辞令が出て別の営業所に異動していったけど、Aの素敵な過去はちゃんとネットワークで伝えておいた。
「また誰かに目をつけてパワハラかますようなら、気の弱いゴルゴだった頃のことを言ってやれ」
って。

ちなみに当時のことを思い出そうとすると、何故かAの顔が丸山穂高で再生される。
雰囲気は似てたなぁ。


249: 名無しさん@おーぷん 19/07/05(金)13:51:31 ID:0yY.kb.yd
Bくんに幸あれ



蹴りたい背中 (河出文庫)