951. 名無しさん 2019年05月01日 15:04 ID:ldF76ncw0
今から五年ほど前にストーカー被害っぽいものに遭っていた。

父は私が産まれてから二年ほどで病気で他界。
母が仕事を掛け持ちで頑張ってくれた。
だから母には言えなかった。

でも、ストーキングにたまりかねて母に話した。
「親は私だけ。私が娘を守らんでどうする。
何故、黙っていた。
迷惑?心配かけたくない?ふざけるな。
産んだ時点でそんなものは織り込み済みだ」

と怒鳴られた。
「まさか自分の娘が」
としか言いようがなかったらしい。

ストーキングは私が働き始めて半年ぐらいから徐々に始まった。
相手は先輩男性で指導者的な立場。
傍に来て耳元で話したり顔を近づけたり。
徐々に
「休みは何をしているのか」
「彼氏はいるのか」
「他の男性社員と話すな」
「ブラウスのボタンは全部しろ」

など、付き合っているわけでもないのに勝手に束縛男だった。

私は冬になるとあかぎれが酷く絆創膏をまとめて買う。
それを見られていたのか
「絆創膏をあんなに買いだめして無駄遣いして」
と言われた。
余計なお世話と思ったので、
「私がどんなものを買おうがまとめ買いしようが私の自由です。
先輩は彼氏でもないし付き合っているわけではありません。
それにずっと監視していたんでしょうか。
はっきり言いますね。
気持ち悪いです。
会社でも必要事項や引き継ぎだけの話なのに至近距離は止めて欲しいです。
マジで考えられません。」

と、
(私が悪者になって会社を解雇されてもいいや)
と思って言った。
先輩は
「いや…入社当時から気になっていて…ごめん。
結婚した時の為に…ほら、まあね」

私の頭が悪すぎて会話が成立していないのか相手がおかしいのか分からなくなってきた。




952. 951 2019年05月01日 15:07 ID:ldF76ncw0
一度として、先輩に告白されたこともなければ付き合いもない。
会社でも昼食も会社帰りの飲み会も一緒になったこともない。
本当に怖くなってしまい、母に
「帰りだけでも最寄りの駅まで迎えに来て欲しい」
と頼んだ。
母が
「ねえねえ、跡をつけてきたら面白いね。
上手くいくかわからないけどさ。
とりあえずストーカーさんの画像あるなら見せて」

とニヤリとしていた(後日、こっそり撮った先輩を見せた)。

最初は警戒していたが段々と薄れていった頃に、気が付くと先輩が同じ電車に乗り合わせていた。
全て終わったような、駄目になったような気分になってしまって、母にメールを送信した。
返事が絵文字で包丁だった。

駅に着いたら母が
「お疲れ~。面倒くさいから外食しようか」
母に目で必死に訴えていると、母が
「あっ、ストーカー!!」
と叫んだ。
通り過ぎようとした先輩がギクッとしたように見えた。

母は先輩に向かって
「娘の会社の方ですよね。お噂はかねがね。しつこく娘に色々言っているそうでありがとうございます。ふふっ、生ストーカーって初めて見た。本当に人の跡をつけてくるんですね。他の予定とかないんですか?っていうか、仕事そっちのけでそんなことばかり考えているんですか?娘と付き合っているんですか?こちらに何か用事でもあったんですか?〇〇さんっておっしゃるんですよね。今まで女性と付き合ったことってありますか?ないでしょ。絶対ないって分かります。だって人との距離感とか間とか分からなそうですもの。ごめんなさいね、悪い意味で言っているんですよ。なん~ちゃって本気です。付きまといする人って独特な雰囲気があって寒気がするよね。自分ではまともって思っているところがね~痛いよね。自分を抑えることも自制心がない。そして、彼は身勝手。」

953. 951 2019年05月01日 15:09 ID:ldF76ncw0
その間も先輩は困ったような顔をしていたが、まだまだ母の攻撃は続いた。
「無駄に顔がよくて物腰もいいから『みんな俺にいちころさ』って。どこまでもご都合主義の勘違い男さんなんだよね。そこまでならただの馬鹿野郎なんだけど。〇〇さんは75%粘着質が入っているから性質悪いよ。あっ、75%だから安心なんて思わないでね。100%って言ったら失礼でしょ。ご両親も自分の息子が独りよがりでしつこくて妄想癖があるなんて知ったらき生きていられないものね。定番の言いなりにならなかったら監禁したり刺しちゃったりするんだよ。絶対するでいいや。それに絆創膏まとめ買い=何故結婚なんですか。その前に、私の体質を受け継いで皮膚が弱いんです。本当に申し訳ない。でも、〇〇さんには関係ないですよね。娘には幸せになって欲しいただそれだけ。だから〇〇さんとの結婚はアリエーナイ。洗濯洗剤アリエール使ってます。イェイイェイ」
我が家ではボールドだ。
母の知らない一面を見てしまった。
もっと言っていたのかもしれないが強烈過ぎて覚えていない。
「娘のどこが好きですか?いつからですか?きっかけは?一秒以内にこたえてください。はいっ、ブブー答えられないから失格~。ストーカーの風上にも置けませんね。何とか言いなさいよ。娘が好きなんでしょう。」

954. 951 2019年05月01日 15:11 ID:ldF76ncw0
「いや、不快な…」
「えええ、不快だって分かっててしたんですか?娘の気持ちを確かめましたか?付き合っているとどこで勘違いしたんですか?手ごたえはいつ確信しましたか?『こいつは俺のもの』っていつ頃から思いましたか?いいですよ。この一件は娘の父方母方両祖父母も知っています。おじやおばに一族みんな知ってます。みんな怒っています。そして近所にも話してあります。もしかしたら、新聞に載っちゃいますね。覚悟はできてますか?後輩なのをいいことに今までも何人もの人に同じようなことをしてきたはず。私は泣き寝入りはしませんよ。たとえあんたの親が地位があろうと権力があろうと逆に叩き潰してやるから。」
先輩は
「もう二度とこんなことはしません。許してください。
親には言わないでください。お願いします。
絶対、こんなことしません。もう何もしません」

と何度も言っていた。

「こっちが強く出ると途端に弱るんだよね。虚言癖でさ。まあね、ストーカーの言うことなんて信じていないけど、今日はここまでにしてあげる。二度目があること嬉しいな。期待しているよ。ささっ、見送ってあげるから電車で帰って。忘れないでね、あんたの出方ひとつでこっちはいつでも行動に移せること。」
先輩を見ると、肩で呼吸してフラフラしながら歩いてた。

955. 951 2019年05月01日 15:12 ID:ldF76ncw0
母が
「ほらっ、しっかり。猪木さんだって元気 があれば何でもできるって。だから女の尻追い回してたんでしょ。」
何故か二人で見送ってしまった。
電車に乗り込んだ先輩は、こちらを見ようともしなかった。

母が先輩に向かって
「ねえねえ、バイバイキーン」
と手を振った。
先輩は母に対して『ヤバい奴』と思ったかもしれない。

次の日のことを考えると気が重かったが、それは取り越し苦労だった。
先輩は熱が出たとかで一週間ほど休んだ。
私はその間に、先輩のことを女性の先輩方に色々聞いてみた。
失礼な言い方ではあるが微妙な感じの軽いストーカー行為に近いものをして退職した社員が数人いるとのこと。
家庭環境は父親と妹さんがいるらしい。
自分の妹が同じ目に遭ったらと先輩は考えたことはないのだろうか。

母に話したら
「考えるわけがない。
自分の欲望だけ。自分さえよければのの人間。
本人ではなくその因果を全部妹さんが背負う羽目になるよ。
馬鹿以下のどうしようもない男だね。
なんとなくだけど、これ以上何もないような気がする。」


それから先輩は休みがちになり、二か月ほどで退職していった。
その先輩がいなくなったことで空気が爽やかになったような気がする。

母があんなキャラだったのには驚いたが、とても感謝している。
いつか私もお母さんと呼ばれる日が来たら子供の為に頑張りたい。

956. 951 2019年05月01日 15:21 ID:ldF76ncw0
関係ない話だが、母の同僚女性が旦那さんからモラハラがあったと相談していたらしい。
で、あの調子で撃退してくれたと聞いた。
「口角が曲がっているから口汚く罵りそう。周り評判は恐ろしくいいんだよね。もしかしてモラハラって一子相伝だったりして。入籍したら自由はないってか。表の顔は仏様、裏の顔は悪魔。外面いいから騙されちゃう、稀代の詐欺師ですね。妻には威張り散らしても真実の姿は蚤の心臓を持つ男。ウケるわ~」

その旦那さんが
「結婚したら自分が偉くなったと勘違いしてしまった」
と言うと、母は
「自分を可哀想に言わないで。元々、そういう気質があったんだから。大切にするならまだしも暴言吐く俺一家の主ですか。見せかけの改心お疲れ様です。今更感満載、野村萬斎だね。縁がないんだから、しつこくしないでね」
等、もっとグサッとくるような発言をしていたそうです。

世間的にはかなり変な母ですが大好きです。

これでお終いです。



Joking Kills: To those who wish to laugh out of their graves... (The Laughing Factory Book 6) (English Edition)