873. 名無しさん 2019年02月17日 17:47 ID:M8RnQvdV0
死病を患った主人を看病していた。
薬のせいで精神的にも不安定になり、まだ若いのに痴呆のような症状も併発。
私を妻と認識はしているものの、母親に対するみたいな接し方をしてきたり。

ある時、主人が
「頼み事がある」
と言う。
「僕の初恋の女性に遺産の半分を分けてあげて欲しい」
一目惚れやらなにやらの思い出ばなしを省けば、要は上記のような頼みだった。
(なぜだか『初恋の女性に会いたい』とは言われなかった。)

「今何をしているか調べて欲しい」
と言われ、名前を聞くと思い当たることがあり。
初恋の女性とやらの家電にかけ、留守電に私の名前と連絡先を残した。




874. 名無しさん 2019年02月17日 17:47 ID:M8RnQvdV0
翌日、その女性の携帯らしき番号から連絡があり、
「どうして今頃連絡してくるのか、もう(主人)とは関わりがない
あの時お互い二度と接触をもたないと誓約書を交わしたはず
まだ私を苦しめ足りないのか、やめてくれ」

などと罵られた。
「わかりました、突然のお電話失礼しました、忘れてください」
と告げて電話を切った。

この女性は10年程前に主人と不倫関係にあった人。
当時、私は調査業者に依頼してそれを知り、主人には内緒で交渉をしていた。

875. 名無しさん 2019年02月17日 17:51 ID:M8RnQvdV0
女性は既婚者で結構年上の旦那さんに不満があったようで、主人の学生時代の恋心につけこんで関係をもつことになったそうだ。
その女性に
「旦那さんに知られたくなければ」
と、主人との縁切りと慰謝料兼口止め料として100万を請求し、以後関わりはなかった。
もちろん主人は何も知らず、突然その女性と連絡が取れなくなり当時は一時消沈していた。

罵られた時の話では、女性は100万の使いみちでずいぶんと旦那さんに責められたらしく、離婚はされなかったものの
「いまだに日用品の買い物ひとつままならぬ生活だ」
とも。
女性に連絡を取ったのは恨み言を言いたかったからで、
(お金持ちの旦那がいるのでどうせ波風立ててまで遺産は受け取るまい)
と思ってのことだったが。

876. 名無しさん 2019年02月17日 17:54 ID:M8RnQvdV0
主人の中で、女性との不倫の記憶がどうなってるのかは確かめられなかった。
なんとなくだが、忘れたか、初恋の女性と不倫女性は別の人と思ってるか、あるいは夢か何かと思ってるのか、とにかく
(はっきりとは覚えてないのだろう)
と思った。

結局正直に
「連絡を取ったが『関わるのはやめてくれ』と言われた」
と主人に話した。
ベッドでそれを聞いた主人は
「そうかー…」
と長くため息をついて黙った。
その二日後に主人は亡くなった。

娘夫婦に招かれたので家は売って引っ越し、女性の連絡先が書かれた資料は処分した。



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