938: 名無しさん@おーぷん 2018/12/12(水)16:35:18 ID:rar
手品師業界では同業者のネタやトリックの模倣は当たり前なのだが、先輩のAは特に酷く、模倣どころか
「そのネタを考えたのは俺だ」
と主張までしていた。
俺は思いついたネタとトリックとその手順を手帳にまとめていて、Aには何度かそれを盗み見られていたようだ。
Aは先輩にあたるから、指摘や文句は言えないし、悔しいがAはネタを思いつく発想力は乏しい代わりに技術は一流で、パクられた後輩に
「俺がやった方がお前よりうまくできるだろ」
と嘲笑っているほどだった。

何とかして懲らしめたいと思ってた矢先に、ある漫画に出会った。
知ってる人もいるだろうけど、金田一少年の事件簿の魔術列車殺人事件というエピソード。
同じくネタとトリックをパクられた挙句に殺された女性が、生前にネタとトリックを奪われることを予知して手帳に欠陥トリックを仕込み、パクった相手が引っかかり死亡するという結末だった。
俺は
(これだ)
と思った。

俺が考えたネタは、『カードと袖に薬品を染み込ませ発火させてから別の物が現れる』という単純なものだが、火を使うので見映えがする。
これを手帳にイラストも添えて書けば確実にパクると思った。
本当は自分が燃えるとも知らずに。
当然ぶっつけ本番で披露するわけではなく、練習もするのだが、そこも考慮済み。
“本番で染み込ませる薬品で出る炎は見映えがするが高価な為練習では安価な代用品を使用”
“練習では染み込ませる薬品の量を抑える”

と添えた。
本当は本番ではなく練習中に引っかかってくれても良かったが、Aの性格から本番で盛大にやりたいと思ってると踏んだ。

本番当日、技術が確かなAは見事に引っかかってくれた。
本番で使う薬品はより発火しやすく量も多め。
漫画のように火が回ることを想定していたが予想以上で、爆発してAは吹っ飛び大火傷をした。
大失敗で恥ずかしい思いをした上に大火傷を負ったので立ち直るまで時間がかかったようだ。

Aは事前に
「このネタとトリックは俺が考えた」
と言いふらしていた。
思うのだが、周りには薬品や火を使う同業者が多く、ご丁寧にAは手順まで『俺が考えた』と説明してたから周りは欠陥に気づいていた筈だ。
にも関わらず指摘しなかったのは、周りは本当に欠陥に気づいてなかったか、Aの失敗を望んでいたんだろうか?


940: 名無しさん@おーぷん 2018/12/12(水)17:06:04 ID:Xpy
>指摘しなかったのは周りは本当に欠陥に気づいてなかったか失敗を望んでいたんだろうか?

後者だろうなー



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