798: 名無しさん@おーぷん 2018/10/24(水)15:03:48 ID:fl7
里帰りしてカーチャンから聞いた話。

一年前からカーチャンがスーパーのパートに行き始めたんだけど、そこの古参おばちゃんが凄いんだって。
何が凄いって口が死ぬほど回るびっくりするほど回る。
ドラマの話から近所の犬の話から親戚の誰かの十三回忌の話までもろもろ喋る。
ただそれと一緒に猛スピードで『おぬしもしや産業ロボットか!』ってくらいに正確に手が動くから、バックヤードだけの話で客前では静かだし、
(たぶんあれが動力源なんだろうな…)
ってことで誰も何も言わないらしい。

で、そこにたまに作業確認とか定時の点検で入ってくる社員の男がいたんだけど、その男は三十路で顔は可もなく不可もなく、ただ不愛想でぼそぼそ喋るんでたいてい何言ってるのかわからない。
離れてるから喋る内容も全然聞き取れず、いつも若い子(可愛いJD)が走って行って内容聞いてくれてたんだって。




そのJDはなかなかいい子で、遅くなる日は彼氏がバイク(でかいスクーターかも?)で迎えに来てたんだけど、
ある日それを見かけた例のボソボソ男が、ショックを受けたっぽい顔でたたずんでた。
そんなことを知る由もなくカップルが走り去っていったあと、男はなんでかこっちにずかずか近付いてきて、

「なんで誰もあの子に彼氏がいるって教えてくれなかったんですか!?」

と、バックヤードに響き渡る大声で叫びやがったそうな。

(ていうかそんな声出るの!?)
ってカーチャンが心の中で突っ込んでいると、やれ
「面接の時から可愛いと思ってた」「あの素直で初心な感じが癒しだったのに」
とか、興奮したのか口からダダモレ。

そしたらおばちゃんが相変わらず手を動かしながら
「そんなの言われないと分かんないわよーw
いっつもわざとボソボソ喋って近寄らせるとか仕向けてるわりになんにもアプローチしないのねこのヘタレwとは思ってたけどーw」

って一撃で撃ち抜いたあとに、
「まあ失恋したんだしあの彼氏とってもカッコイイし(実際爽やかイケメンらしい)、まかり間違っても勝ち目ないから今度からちゃーんと腹に力入れて声出してね!
出来るでしょ!」

ってにこやかにトドメ刺したらしい。

鮮やかに斬られた男は真っ赤になって押し黙ったあと、
「すみませんでした」
って頭下げて出てった。

その後、男は普通に声を張るようになって、そのせいか店長に商品アナウンス頼まれたりして、滑舌も悪くなく結構いい声だったので、パートのおばちゃんたちもうちのカーチャンも褒めたんだそう。
そしたら自信がついたのか明るくなって、最終的におばちゃんの姪を紹介されて結婚したそうな。

「へー、最後はいいオチがついたじゃん」
と言ったら、
「あんたもそろそろ落ち着いて欲しいんだけどねえ…」
ってカーチャンにしみじみされたのが地味に痛かった。

いや、無理です喪女だからね!!ごめんな!!



hro118 邦画プログラム「ターン」牧瀬里穂 原作 北村薫