671. 名無しさん 2018年03月14日 17:36 ID:lXNy8IRG0
胸糞悪い話なんだけど。

伯母(母の兄嫁)は家事を完璧にこなす、専業主婦の鏡のような人だった。
けれど、伯母はその完璧さを周りの人間にも強要する人でもあった。
「主婦になる選択をしたのなら、家事は完璧にこなして当然。」
「自分の選んだ家族には不満を持ってはいけない。」
「母親になったのなら自分のお洒落や娯楽は二の次、常に子供優先。」
「自分の境遇は自分で選んだもの、文句を言うのは精神的に大人になっていない証拠。」

といった具合で、普段の井戸端会議で日々の小さな愚痴をこぼしている人にそんな風に説教をしていた。
だから親しい友人はいなかったらしい。
滅多に誰かを悪く言わないうちの祖母でさえ、
「姑(明治生まれで、近所にも知れ渡るほど嫁いびりが酷かった人らしい)の生まれ変わりみたい」
とこぼすほどだった。

そんな伯母の自慢は、三人の子供(女一人と男二人)が優秀なこと。
でも、いとこ達は伯母を煙たがっていた。

従姉(長女)が就職してしばらく経った頃、親戚の集まりで
「結婚はしないのか」
という話題になった。
お酒が入っていた事もあったからか、長女は
「家庭に入ったら滅私奉公しなきゃいけない上に一切不満を持っちゃいけないとか、私にはできそうにないんで、結婚は私の人生設計のうちに入ってないんですよー」
と、ケラケラと笑いながら言った。
それを聞いていた伯母は怒り始めたが、
「これは私が自分で決めた生き方なんだから、お母さんは口出ししないで」
と一蹴。

皆、普段の伯母の言動をよく知っていたし、お酒が入っていた事もあってか
「いいぞいいぞ」
と長女をはやし立てた。
雰囲気に飲まれたのか従兄(長男)も、
「俺も結婚はしないつもり。
だって、好きな人に母さんみたいに大変な主婦業させるわけにはいかないし」

と言ったものだから、伯母は顔を真っ赤にして退室してしまった。

でもここまでは、まだ笑い話で済むレベルだった。




672. 名無しさん 2018年03月14日 17:39 ID:lXNy8IRG0
それから数年後。
大学生だった従弟(次男)が自ら命を絶ってしまった。
才能がある程度必要な分野の大学に進学していた従弟は、当時スランプに陥っていたらしい。
その事に関する愚痴を友人にこぼしていたのを、運悪く伯母に聞かれてしまった。
親戚の前であれだけからかわれたにも関わらず、
伯母はいつもの調子で、
「自分の望んだ進路なんだから云々」
と説教をしてしまったらしい。
普段なら伯父や他のいとこ達がフォローに入っていたらしいけど、当時伯父は激務でなかなか家に帰ってこられない状況。
精神的に追い詰められていた次男は、一人暮らしをしている長女長男に連絡を取ることもなく、そのまま命を絶ってしまったとのことだった。

それにより伯母は、長女長男から縁を切られた。
元々仕事人間だった伯父もさらに仕事に打ち込み、時々しか家に帰ってこないようになってしまった。
親戚も
「(伯母)が(次男)を追いつめてころした」
と罵るか、全く関わりたがらないかのどちらかだった。

673. 名無しさん 2018年03月14日 17:40 ID:lXNy8IRG0
そしてしばらく経ったある日のこと。
数日ぶりに帰宅した伯父が、郵便受けに郵便物が溜まりっぱなしになっているのを発見した。
不審に思った伯父が恐る恐る家に入ると、リビングで伯母が倒れたまま動かなくなっていたそうだ。
死後何日か経っていたけれど、暑い時期ではなかったため、それほど酷い状況ではなかったのが不幸中の幸いだった。
もし、伯母の人当たりが良かったなら、伯母の姿が見えないと近所の人が早く気づいてくれただろうし、長女や長男が家の様子を気にかけていただろうと思う。
親戚のみで葬儀を行ったけど、いとこ長女が、
「自分で選んだ道だもんね、文句なんてないよね?」
って伯母の棺に向かって呟いていて、ちょっと怖かった。

けど、正直自分も同じ事を思っていた。
持病があって体調によっては家事も仕事も休まざるを得ないうちの母に対して
「だらしがない」
と言い切ったり、
結婚・出産後もある程度華美な見た目が必要な仕事を続けている姉を
「妻/母としての自覚が足りない」
と詰ったりする人を、可哀想だなんて思えない。



Dead-end Road