586: 名無しさん@おーぷん 2017/09/22(金)11:42:18 ID:YJw
中学からのクラスメイトに、お調子者のAがいた。
AはDQNなことをして人を笑わせたり盛り上げるヤツで、クラスの中心人物だった。
DQNの内容はひどいもんだった。
女子のパンツおろして生尻露出させたり、いじられ役のやつのジャージ汚して黒板に晒したり。
中学生くらいって残酷だからそんなんでも笑うんだよな。

しかし成長するにつれ、周囲はAの言動で笑わなくなった。
二十代になってもAは変わらなかった。
「俺が一番面白くて、一番場を盛り上げる!」
という変な自信があるらしかった。
実際、Aにはまだ取り巻きが数人だが、いた。
Aが女を
「ブスブス」
言って泣かせたりバッグを勝手に探って中身を笑いものにしたりすると
「ワーっ」
ともてはやすDQN仲間が。
俺は同じ大学で地元民なので、Aとは完全に付き合いを切れずにいた。




あるときフィールドワークでAたちと一緒に新幹線に乗った。
Aは売り子さんにちょっかい出したり、ギャーギャー騒いだり。
まわりが苦笑してるのをウケたと勘違いしてさらに騒ぐ。
そんな時、
「グリーン車に(大物お笑い芸人)がいる」
と誰かが言った。
そしたらAが
「見に行く」
と言い出した。
俺は止めたが
「笑いで勝負しに行く」
とアホなことを言い張るA。
そのままグリーン車に走って行ってしまったので、ストッパー役+謝罪役として俺他2人が後を追った。

グリーン車には本当にその芸人がいて、周囲の人と何かしゃべっていた。
Aがよせばいいのに絡みに行った。
「すみません」「A黙れ」
と止めたが芸人は
「いいよいいよ」
みたいなことを言い、数分Aの相手をした。
ちょっと会話は再現できないが、俺は
(芸人の話術スゲー!)
と思った。
Aがどう言ってもサラっとかわして笑いに持っていくし、逆にAに突っこむし、ほんの1分か2分でAの方がいじられ役になって、Aが何か言ってもそれがAのボケってことにされてオール無効化されていた。
それでも空気読めないAは粘った。
が、段々声が小さくなっていき、ついに撃沈。

黙ってしまったAを回収し、謝り倒す俺たちに
「テレビ観てね」
と芸人はニッコリ。
Aを席に連れ帰った後は
「芸人スゲかった!」
と大盛り上がりだった。

その日以来、Aはおとなしく…というか暗いヤツになってしまった。
俺はその芸人をむしろ嫌いだったんだが、あの日のたった5分で印象が180度変わった。
プロって凄いと思わされたわ。



暗転 (朝日文庫)