803: 名無しさん@おーぷん 2017/08/06(日)10:56:08 ID:VoQ
もうずいぶん前のことだけど、真冬のある日、義母と一緒に和食のお店に入った。
とても混んでいて、お店に入ってすぐの所にある椅子に座って順番待ち。
しばらくして四十代ぐらいの女性が、母親らしき老人が座った車椅子を押して入ろうとした。
その女性は外でいったん車椅子のブレーキをして、お店のドア(内開き)を開けて
「申し訳ありません、車椅子を入れますのでちょっとだけ開けさせてください」
と言ってドアを固定させ、車椅子の方に戻ってブレーキを外していた。

するとなんと義母が立ち上がってドアを閉じた。
(え?何やってんの?)
と思ってると女性が慌てたふうに再び顔を出し、
「ごめんなさい。少しだけ開けさせてください」
とペコペコ謝りながらドアを固定させて車椅子に戻ると、義母が
「寒いじゃないの!」
と言いながらまたドアを閉めた。
「お義母さん!車椅子で入りたいからでしょ。どうして閉めるのよ!」
って言ったら
「せっかく店内温めてるのに台無しじゃない」
と平然と言った。




気が付いた店員さんがやってきてドアを開けて押さえながら
「予約の〇〇さまですね。お気をつけてどうぞ~」
と。
女性は
「ご迷惑かけてすみません」
と謝りながら車椅子を押して入ってきた。
他の順番待ちの人たちはニコニコして
「いいんですよ~」「大変ですね~」
とか言ってたけど、うちの義母だけが
「歩けなくなってまで出てこなくてもいいのに」
って言ってた。
この日の出来事は強烈に覚えている。
義母のことを元々「あまり合わないな」と感じてたが、この日にハッキリと
(この人嫌いだ)
と思った。


それから数年後、その義母が車椅子生活になって施設に入所した。

車の自損事故で神経やられて歩けなくなった時、義母はまだ70になったばかりだった。
私たちが住んでるマンションはとても車椅子で生活できる造りじゃないし、部屋もない。
義姉も義弟も
「同居は勘弁してほしい」
そうだ。
義姉が調べてくれた有料ホームが空きがあって、そこならすぐに入れそうだということで、話し合いの結果、
“実家(もマンション)を売って、義父が遺してくれた預貯金もあるし年金もそこそこ貰ってるし、足りなくなった時のために姉弟それぞれが毎月同額を義母名義で作った通帳に預金していく”
ということに満場一致(義母以外)で決まった。

最初の数年は義姉が時々外に連れ出したりしてたみたいだけど、何かで大喧嘩したらしくてそれ以降は事務的に顔を出す程度。
私たち夫婦や義弟夫婦は、大型連休に義姉夫婦と共に全員揃って顔を出すだけ。
本来なら長男である夫とその嫁の私がやるべきことを義姉が淡々とやっていて、一度申し訳なくて謝ったことがあるんだけど、その時義姉に
「母の性格は私が一番わかってる。お嫁さんに苦労させられない」
と言われて、泣きそうになったわ。

今の平穏な生活は義姉のおかげだと思っている。



Closed Doors (English Edition)