471. 名無しさん 2017年02月15日 10:02 ID:cSbqzIIm0
幸せな人が憎くて仕方なかった。

その頃、夫と二歳の娘とアパート暮らしだった。
同じアパートにA夫妻(年齢的には親世代に近い)が住んでいた。
この夫妻、仲がいい。
毎朝、駐車場でニコニコしながら見送りをしていた。
休みの日には二人して出かけていく。

それに比べ、私の夫は怪我を理由に休職から退職していった。
何もせず、ゲームばかりして娘の面倒すら見ない。
私の両親は、母は他界、父は再婚しているので頼れない。
夫の親には頼みたくはない。
何もかもうまくいかない。
(どうして私ばかり)
といつも思っていた。

そんな時にA夫妻が憎くなった。
特にA妻には恨みと憎しみが強くなった。
姿を見かけるたびに暴言を吐いた。
「糞ババアが外に出るな。」「醜い糞デブ女、デブ女は死ね」
と罵った。
A妻はチラッと見て肩を竦めて私を通り過ぎる。
それが悔しくて堪らなかった。




A妻をたまに外で見かけると、近所の子たちが
「アッおばちゃんだ」
と駆け寄ってくる。
若い赤ちゃん連れのママたちも親しげに話したり赤ちゃんを抱っこしたりしている。
それを見ても
(デブがご機嫌取りをして恥ずかしい)
とさえ思っていた。

A夫妻のことが知りたくて郵便物を調べたりもした。
手がかりはつかめなかった。

472. 名無しさん 2017年02月15日 10:03 ID:cSbqzIIm0
それから数日たってスーパーで買い物をしている時に、A妻とよく話している奥さんに出会った。
(もしかしたらA夫妻のことが分かるかも)
と思い適当な理由をつけて聞き出した。
ショックすぎて愕然とした。

A夫は大手企業に勤務で転勤族。
娘は二人で成人済みで長女は女医で次女は和裁の仕事をしているらしい。
「詳しくは聞いたことはないが話から察するにそんな感じがした」
と聞いた。
もしこれが本当なら私なんて勝ち目がない。
幸せな人だから私の暴言何て意に介さずだったのかもしれない。

そんな時に限ってA妻にバッタリ会ってしまった。
「今日は糞デブって言わないの?
あなたね、子供がいてそんなことばかり言っていて恥ずかしいと思ったことないでしょ。
本当に太っているからべつに構わないけど。
もし、私がタチの悪い人だったらどうなると思ってるの。
暴力や犯罪に発展する可能性もあるんだよ。
まあ、あなたの言っていることも暴力の一つだろうけど。」

私は今までのことを謝り、私の今の生活を話した。
「だから暴言はいたの?
とても気分を害しているのは事実だしあなたの家庭状況を聞いたところで私には関係ないから。
しいて言うなら、二人目のお子さんは作らないことかな。」
二人目を作るなと言う意味を私は理解できなかった。

それから一年ほどしてA夫妻は引っ越していった。
夫は相変わらず働こうとしない。
そんな時に二人目ができてしまった。
話し合いの末、夫の実家で同居することになった。

A妻の二人目を作るなと言う意味が分かったような気がした。
逃げる(離婚する)ことも出来たはずなのに。
子供一人なら何とかやっていけたのかのかもしれない。
二人目がいる以上このままでいるしかない。
粋がって幸せな人に嫌がらせをすることで憂さを晴らしていた。
結果は自分の吐いた唾が何倍にもなって頭上から落ちてきた。

今もA夫妻は仲良く暮らしているんだろうなと思い出してしまう。



終わりなき負債 (SHOGAKUKAN MYSTERY―クラシック・クライム・コレクション)