514: 名無しさん@おーぷん 2016/10/26(水)14:46:53 ID:qwi
父の生家は貧乏だったらしい。
軽く男尊女卑っぽい傾向もあったようで、伯母は弟である私の父を大学に行かせるために高卒で働かされて、給料の大部分を家に入れさせられていたらしい。
祖父母は私が産まれた時には既に故人だった。
全部父から聞いた話だから本当のことはわからないけど、今だったら児相が介入してるだろうなーって感じの暴力暴言もあったらしい。

大変な思いをしたんだなってのはわかるんだけど、おかげで伯母は女子大生が大嫌い。
わざわざ大学のそばを放浪して、大学の門から出てきた女の子の耳元で
「ブス」「化粧似合ってないよ」「餓鬼のくせにこんな高価なもん持ち歩いて」「尻軽女」
と呟いたり、自転車で大学の周りを走って女子大生にベルを鳴らしたりしていたらしい。
ベルは「歩道でベルを鳴らすのは法律で禁じられています」っお巡りさんにて叱られてから止めたみたいだけど。




そんなことを酒に酔った伯母に武勇伝みたいなノリで語り聞かされた。
当時は私が小さい子供だったからか矛先が私に向かうことはなかった。
割と仲はよかったと思う。

でも大きくなるにつれて私に対して妙に厳しくなって、話す機会もほとんどなくなった。
私が進学した時に
「学費を出すな。奨学金を借りさせろ」
って父に命じてたことが発覚した時が、私の中で伯母との精神的な決別を決意した瞬間だった。
表向きは伯母の言うことを聞き入れたふりしてこっそり払ってくれたけどね。
大学に通っている間は伯母の嫌味がうるさかったから、母が気を使って伯母と私を会わせないようにしてくれた。

この伯母と家族ぐるみで疎遠になれたのは半年ぐらい前。
私の妹が大学に受かったと聞いて、伯母が
「大学って就職出来ない人が行くところでしょ?」
と笑いながら言った。
相変わらず父は伯母に負い目を感じて何も言わないし、母は父方の親族に遠慮して黙ったまま。
今までだったら私も面倒だから黙っていたけど、矛先が妹に向かったことで憤りを抑えられなくなった。

でも罵倒なんかしたら伯母と同じ次元に立っちゃう気がしたから、まず大卒と高卒の生涯賃金の差を説明した。
何千万単位での差が生じるんだよね。
それでもヘラヘラ笑って納得しない様子だったので、
「天然資源の輸出による利益は見込めない、少子化が進んでおり単純作業に頼った産業は縮小する一方、そんな小さな島国が今後生き残っていくには教育によって個々の人的資源の質を上げるのが最も確実、短期的な支出を惜しんで若者に教育を与えず安価な単純労働で使い潰せばこの国に未来はない…」
ということを、統計や他国の状況の説明も交えつつ簡単に教えた。
途中で怒鳴られたり肩掴まれたりして遮られたけど、それでも私は語り続けた。

話したいことを話し終わって私が黙ると、伯母はしばらく黙った後に
「近頃の女は金ばっかりかかるね」
と鼻で笑いながら言った。
「そりゃ自分の娘には豊かな人生を送ってほしいからな」
と、父はやっと言い返してくれた。
伯母は黙って帰っていった。

その後は伯母抜きで回るお寿司を美味しく頂いた。



時代 —Time goes around—